スーパーの業務改善入門

2014年07月17日

売上は連続前年割れ、『営業利益は、7.89倍』の業務改善事例(5)

「資金繰りが・・・」


訪問するようになってから、半年も経たないうちに、
財務担当の社長の奥様から、
「先生、ご相談が有るんですが、お時間をいただけますか」
と神妙な面持ちで、申し出がありました。
「わかました」
と私は答えて、二人で応接室に入り、奥様のお話をお聞きしました。

奥様「何時も、ありがとう御座います」
新谷「いいえ、こちらこそ、大変お世話になっております」
  「ありがとう御座います」
奥様「ところで、相談なんですけど・・・」
新谷「はい」
奥様「実は、ここ数か月、月末の資金繰りが厳しくて・・・」
新谷「えっ、平常月にですか?」(1月、2月ではないという意味)
奥様「そうなんです」
新谷「今の売上高が有るのに、ですか?」
奥様「はい」

普通なら、あり得ない。

例えば、1月の月末等は、12月分の仕入れ分の買掛け金を、1月の少ない売上高で支払いをすることになるので、現金が足りなくなることはあり得る。
しかし、平常月、ましてや、Aストアは、それなりの売上高がある。
そして、荒利益率も、ここ数か月、確実にアップしてきている。

繰り返しになるが、普通あり得ない。


損益表の確認と聞取り


私は、前述したように、コンサルティング開始の最初の段階で、実績数値はあまり見ません。ましてや、緊急性がある場合以外は、財務帳票などに目を通すことは、まず有りません。

しかし、ここは緊急事態。見ないわけにはいかない。

損益表に目を通す。人件費率が少し高いが、大きな問題は見当たらない。しかし、言われる様にあまり儲かっていない。が、それなりには、営業利益は出ている。

新谷「借入金の返済は月々どれくらいですか?」
奥様「大体、○○○万円ぐらいです」
新谷「減価償却費が○○○万円ですから・・・」(経費計上するが、実際には手元に残るお金)
  「返済額から減価償却費をひいて、○○○万円ぐらい営業(経常)利益が月々ないといけませんね」
  「なるほど、現金が足りない月が多いですね」
新谷「ところで、ここ数か月の間に、経理上何か変わったことはありますか?」
奥様「自社の販促カードを他社(専門会社)のカードに変えました」
  「それから、どうも資金が回らなくなったんです」
新谷「でも、おかしいですね」
  「おそらく、販促経費は、今までより減っているはずですが?」

そこで、私は、提携カード会社の担当者の方に電話で確認をしてみました。
やはり、従来の自社カードの時より、現状のほうが経費率は確実に下がっています。

「ん~っ」分からない。



税理士の先生に聞取り


新谷 「ここ数か月で、会計処理で変更されたことなどはありますか?」
税理士「販促カードの変更に伴い、売上の計上方法が変わっています」
新谷 「どういうことですか?」
税理士「以前の自社カードの場合は、お客様が貯まったポイントを商品券に変えて使用した場合、その分は売上計上していませんでした」
   「そのかわり、商品券分の経費計上もしていませんでした」
税理士「新しいカードになってからは、販促会社から経費の請求がありますので、その分を経費計上しています」
   「カード変更後は、お客様が商品券を使われた場合、その分売上計上しています」
   「どちらの場合も、結果(営業利益額)は同じようになります」

確かに、結果について言っていることは間違いない。
しかし、「なぜ、自社カードの時、経費計上していなかったのか?」ということと、「使った商品券(ポイント交換分)の売上分を計上していなかったのか?」ということは、大きな問題です。

何故かというと、この場合、会社の会計処理(営業利益高)には問題が無いのですが、商品はお客様に渡っているのに、売上高が立たないということですから、「各部門の荒利益率に、影響してしまう」ということです。


実は、専務と私は、部門別の損益表をつくる準備を進めていました。
ところが、POSデータの売上高と損益表の売上高がどうしても合わない。そのことに、専務は悩んでいました。
地元の公共施設や旅館などへの売掛け金処理など、諸々の問題も絡んで、原因が追究できないでいました。
そこへこの問題です。


どちらにしても、会計処理とそれに関わる業務に改善の必要性があることは、だんだん解ってきました。


会計処理の問題


「このこと(経理処理の変更)を、専務は理解していますか?」と会計事務所の担当役員に聞いてみた。

税理士は、全く説明していなかった。
営業の責任者がこのことを知らない。これは、大変な問題です。


どう言うことかというと、売上高が上がり、販促経費が上がる。二つは、同額であるため、営業利益に誤差は発生しない。特に、問題は無い。

しかし、この場合、荒利益高が違ってくるのです。
なぜなら、売上高がアップしますが、期間の売上原価は変わりませんから、売上高がアップした分、帳簿上荒利益高がアップします。

そして、荒利益がアップしますが、それと同額の経費がアップしますので、営業利益は変わりません。
繰り返しになりますが、会計上は、何の問題もないのです。


ところが、営業の責任者としては、大問題です。
荒利益が帳簿上アップすることを知らなかったわけですから、従来までと比べて、荒利益率がアップしているのを見て、単純に営業成績が良くなってきていると判断します。
ところが、中身(営業利益高)は、何も変わっていないのに、です。
これでは、営業判断を大きく誤ってしまいます。


そして、会計処理のもう一つの問題は、月次の決算がいい加減に処理されているという事実です。

公共施設や旅館などへの売掛け金の処理や、仕入の買掛け金の処理が、月の後半になっても正しく処理されていません。これが、長年当たり前になってしまっています。
結果的に、月末には、前月分の月次決算の用紙は作られていますが、会計事務所の担当者が、実勢数値の伴わない、形だけのものを出しているというものでした。

これでは、正しい経営判断が出来ません。
景気の良かった時代は、売上が右肩上がりで、ずさんな会計処理でもやって来れたと思います。しかし、今は違います。



税理士という仕事


「税理士の仕事ってこんなものですか?」
私は、弊社の経理をお願いしている、税理士の先生にAストアの現状を聞いてもらいました。

先生「そんなもんですよ」
  「ほとんど、その様な感じです」
  「税務上の決算報告書をつくるのが仕事と思っている方が多いと思います」

私は、愕然とした。と同時に現実を知ることが出来た。
(勿論、全ての税理士さんが、そうであるとは、決して思っていない)
しかし、クライアントの為に如何に良いアドバイスが出来るかが、私達の仕事。今回の件は、どうしても人道的に許せない。


とは言え、目の前の課題に優先順位を付けて、スピードを持って改善しなければならない。
1.資金繰りの改善
2.荒利益率アップ(帳簿上)の理解と営業部隊の改善方行動
3.正確な月次会計処理と日々のコントロール
スーパーマーケットの経営の根幹の部分です。

やらなければならないことは、ハッキリしています。



・・・・・次回に続きます・・・・・


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