スーパーの経営戦略入門

2016年01月05日

生産性の向上に舵をとれ!

少子高齢化や過疎化の進行、ドラッグストアやコンビニエンスストア、ネットスーパーなど、業種業態を超えた競争。そして、IT技術の大きな進化による情報共有のハイ・スピード化など、スーパーマーケットを取り巻く環境は、ここ数年で様変わりしています。

FacebookやLINE等に代表されるSNSの出現によって、テレビや新聞などのように、一方通行の情報の流れが、双方向の情報共有が可能になり、その量と質、そしてスピードが劇的に変化しました。
今までは、商品も情報も店舗側から発信され、売り手優位であったものが、現在では、お客は店舗より先に情報を得て、活用できるようになったのです。

当然のこととして、低価格や豊富な品揃えだけでは、情報を持ったお客が満足してくれる時代ではなくなってきました。

また一方、新聞の購読率の低下により、新聞折込みチラシの費用対効果の低下も大きな課題になってきています。新聞折込みチラシに頼っていたスーパーにとって、マーチャンダイジング以上に、マーケティング技術の習得も大きな課題となってきています。

 時代は大きく変わりました。高度成長期の様に、「これをしておけば良い」という、答えが一つで収まる単純な時代では、もうありません。

 

戦術から戦略、コンセプトへ

 スーパーマーケット企業は今、解決しなければならない多くの問題を抱えています。

しかし、中小零細企業で、解決への道筋を明確に描けているところは少ないと思います。

単純な安売りだけの戦術では、会社に適正利益をもたらしてくれる優良顧客のニーズは満たせません。
また、先進企業の表面だけを真似た、コンセプトを持たない売場づくりは、小手先のノウハウの取り込みに終始し、一時的な成果しか出すことしかできず、これもまた、中長期に適正な利益を出し続けることは難しいと思います。

問題の根幹は、教育の仕方にあると思います。
その核心は、原理原則の勉強不足とコンセプトや戦略、生産性向上意識の欠如などです。

高度成長期にその存在だけで、『安さ』と『近くて便利』を武器に大きく成長できたスーパーマーケットですが、先述したように、環境が大きく変わってしまったのです。
改めて、明確なコンセプト(対象顧客)と戦略の策定が重要になっています。

 

生産性の向上に活路有り

 複雑化する課題に向き合うためには、先ず基礎基盤となる生産性の向上は、避けて通れません。

 スーパーマーケット企業では、桁外れに生産性が低い店舗が多くあります。
私は、現場において、「こんなことも出来ていないのか・・・」と思い知らされることが多々あります。

スーパーマーケットは、生鮮食品を取り扱う業態特性上、多くのMH(マンアワー、人時)を必要とし、人件費率の高い業態です。
生産性が低いということは、売上が伸びにくい現在、経営上大きな問題です。しかし、その分、改善を行うことができれば、大きな可能性も含んでいると言えます。

ただ、このことに気付いていない企業が多くあることも事実です。
原理原則を勉強して、特に時間という、全企業に平等に割与えられた『資産を最大限利用』するということを考えて戦略に据えることが重要なことです。
作業改善、在庫改善、システム改善など、特に今まで改善の取り組みを行っていない企業にとつては、遣れることは無数にあると言ってもいいでしょう。その分、大きな可能性を秘めているのです。

私には、宝の山に見えます。

 

手持ち資産に磨きを掛ける

 中心対象顧客が女性である業態である以上、男性の感性だけでは、多様化するニーズやウォンツに答えることには、自ずと限界があると思います。

その意味で、パート社員を中心とする女性従業員の力を発揮させるための環境整備は、今後の競争力アップのための大きな要素となると考えます。当然、人事制度や報奨制度と絡めて戦略的に行うことが、大きな成果に繋がってきます。
事実、私は、「この人に、こんな才能が有ったのか・・・」と驚かされることを、現場で多く経験してきています。
また、売り場における不満や要望を明確に持っているのも、お客である女性従業員です。
その大小はあれ、女性社員の才能の花を開花させてあげることも企業の重要な仕事であるのです。そして、同時に、会社の競争力と生産性の向上に直接的に関わる重要なポイントであるのです。

最低賃金が、どうだこうだという様な低レベルの議論を行うような低い感性では、中長期の戦いは多難であると言えるでしょう。

 また、会議等においても、経営幹部からの一方通行の情報伝達ではなく、意見の違う者同士の闊達な討論や、コンセプトに沿った、アイデアの出し合い、吸い上げて戦術にまとめあげられる様な、リーダーの存在が重要になってきます。

 

単純作業と付加価値作業の理解

 今後、中小零細の企業が、競争力を確実のものにするためには、

①必要作業時間(※1)の割合の多い単純作業の一時間あたりの処理能力を高めて人時を削減する
②①によって生み出した人時を、高付加価値を生み出す作業(業務)(※2)に、戦略的に投入する
  (※1:補充品出しや商品加工など  ※2:計画業務、コトPOP作成、試食販売など)

ということの正しい理解と、迅速な業務改善活動が、今後の競争優位に確実に繋がって来るのです。
また、①の行動は、時間管理ですので、結果が見えやすく、誰の目にも公正に改善結果が見えます。

ダイエットと同じで、なかなかスリリングな楽しい仕事です。
一方②の行動については、創造的で未知への挑戦的な要素を含んでいます。

人は、遣ったことのないことに対する不安も感じると思いますが、実際にやってみれば、楽しさを大いに感じる活動になります。仮に失敗しても、それが知識と経験なり、次のステップの重要な改善要素にもなります。
そして何より、変化のある売り場は、活性化して顧客満足へ繋がり、お店のファンづくりに貢献します。顧客生涯価値を高め、お店の中長期の発展に大いに貢献するものとなるでしょう。

 

戦略とオペレーションを支えるリーダーシップ

 業務改善とは、考え方や、それに伴う行動を変えていくわけですから、痛みを伴う場面も想定されます。そのためには、強いリーダーシップで決断できる人材の登用や育成が企業側に求められるのです。

会社が適正利潤を確実に安定的に稼ぎ出し、従業員の報酬アップと、教育訓練や設備投資等に再投資するという、正しい経営サイクルを回すことが重要です。

問題は、企業規模や売上の大小ではありせん。
目先の売上を追うための枝葉のノウハウに操られ、生産性という企業の幹や根を元気にすることに気付いていないことが問題であるのです。

 

コンセプトを持って、正しい方向に高い目標を設定し、実行に移せることが出来るかが重要なポイントなのです。

やり方を変えましょう。スピードを持って。

 



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■生産性の向上に舵をとれ! ⇒http://www.summit-rc.com/blog/2770/

■最低賃金のアップと生産性の向上http://www.summit-rc.com/blog/manage/228/

■最低賃金など考えるな!(1) http://www.summit-rc.com/blog/improvement/738/

■会議の生産性アップで、スーパーマーケットが変わる! (前編) ⇒www.summit-rc.com/case/2714/



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