スーパーの営業戦略入門

2008年09月26日

人時売上高を上げる

中小のスーパーマーケット企業では、人の生産性の低い企業があまりにも多くあります。
売上を上げることは出来ても、利益が伴わない。高い営業利益を上げることが出来ない。結果として、現場で働く従業員の給与所得も低位安定(上げられない)状態である。という様な図式です。
これでは、現場の従業員は元気がなくなり、アイデアも出ず、売り場も活性化しません。

スーパーマーケットの業態としてのライフサイクルは、成熟期にあります。成長期の戦略では、とても延命は出来ません。オペレーションの改革に手をつけて、改善実行を行なえば、また新たな進路が見えてきます。

例えば、製品を製造するメーカーでは、生産性が低いということは、市場での競争力が低いことを意味します。よほど差別化された、独自性のある商品開発をすれば別ですが、価格が抑えられるコモディティ化された商品やサービスは、生産性の高い製造現場で商品を生産しなければ、コスト比率が高くなり価格競争力が低下してしまいます。

スーパーマーケットの店舗では、生鮮部門の商品化のための加工作業や、売り場への商品補充作業などにかなりの人時を必要とします。そして、店舗全体の投入人時に対する加工作業や、補充作業の人時構成比は、飛び抜けて高い状態です。

スーパーマーケットにおいても、メーカーの工場と同じように、生産性の向上に重点を置いた改善活動を実行することが必要です。個人とチームのオペレーション・スキルを確実にアップし、限られた人時をより効果的に活用することが求められます。

方向性としては、

 1.営業利益率の改善を行い、会社の体質を強くすること。
 2.削減できた人時を差別化された商品やサービスの開発などに振り向ける。

というような目標を持った行動を確実に実行することです。


人時売上高は、人と組織の生産性


投入した1人時当たりの平均売上高が人時売上高です。人時売上高(売上高÷投入人時)は、人と組織の生産効率を表すものです。

店舗の人時売上高の実績を左右するのは、従業員全員が行なう店内作業全般と物流などの各種店舗支援システムの出来で決まります。

人時売上高は、会社の利益は勿論、従業員の利益(給与所得)にも大きな関係があります。直接的に関係するのは、人時生産性(荒利益高÷投入人時)のほうですが、投入する1人時当たり、どれくらいの売上高を上げることが出来るか、また逆に、ある売上高を達成するのに、どの程度の人時投入で、それを達成出来るかという組織の能力は、会社全体の生産性に大きく関係します。

人時売上高の数値が他社と比べて低いということは、オペレーションやシステムに何らかの欠陥があり、作業全般に無駄が多くいという事が考えられます。
ただ、前向きに考えれば、それだけ改善余地が大いにあるということになります。


従業員個人の経営スキルとしての人時売上高


人時売上高を高位に保てるというのは、従業員個人のオペレーション及び、マネージメント・スキルです。どんなチーム(店舗・部門)の担当になっても、売り場を一定以上のレベルに保ち、売上や荒利を上げることが出来るということは、競争の厳しい今日の状況においては、最も重要なことです。

店舗としても、部門としても、ひとつの事業部として経営を行なっているのですから、売上、荒利、人時(人件費)の3つのコントロールが確実に出来なければなりません。
このスキルを持ったチームや会社は確実に高収益という大きな成果を手にすることが出来ます。

私のクライアント企業においては、荒利益高と人件費を管理責任数値として評価を行い、リーダー一人ひとりが経営者意識を持ち日々営業活動を行い、個人も会社も、過去にあげてきた営業利益に比べ物にならないような、大きな変化を起こした企業が多くあります。
また、このようなスキルを身につけたチームは、変化対応力が付き、競争力も大変強くなります。

個々の店舗では、それぞれの商勢圏において、様々な競合状況にさらされます。このことは、経営者1人の力だけでは、店舗それぞれに適切な対応が出来なくなってきていることを意味します。現場のリーダーや社員一人ひとりの経営者意識とオペレーション・スキルが今後の勝ち負けに大きく影響するのです。


人時売上高の目標数値


人時売上高を何処まで上げるかということは、作業改善とシステム改善の結果と営業戦略で決まります。

作業改善とは、現場の従業員一人ひとりの作業の進め方を根本的に見直すことです。現場担当者の作業の手順や動作、道具とその使い方などを丁寧に観察し、無駄や無理の排除とスピードアップを実現していきます。
現場の担当者の訓練を地道に確実に行い、改善度合いによって人時売上高を結果として、また予算として、日々アップしていきます。

システム改善とは、大きくは、物流や情報などを「現場最適化」の方向で改善することです。

物流は、
  ・店舗が必用な時に、
  ・必要なものを
  ・必要な量だけ
提供するのが、使命なのです。

このことが、言い訳無しに実行されることが、店舗の無駄な在庫やそれに関わる無駄な一連の作業を無くし、現場作業の効率化を生みます。

情報システムは、現場での在庫管理や発注、販売計画などの「商売の根幹」の部分の精度(効果)アップのための後方支援のシステムです。

スピーディに情報が開示され、
  ・見やすくて、
  ・使いやすい、
  ・ためになる
データや情報を現場に提供しなければなりません。

情報システムと現場の優れたオペレーションがかみ合えば、お客様満足の大きな利益を産むことが出来ます。
本部のオタクが作った、やたらと数値デーチの多い帳票は、現場では何の役にも立ちませんし、それに投資するお金や時間は、現場で稼ぎ出した儲けを食いつぶすだけです。

最後に、営業戦略ですが、ここが経営戦略上一番大事な部分です。そして、人時売上高の適正値を決定します。

例えば、営業戦略上で店舗をザックリ3つのタイプに分けると、
  1.鮮度と安さを武器にする店
  2.サービスや上質感を武器する店
  3.1と2の中間
ということになると思います。

1のタイプは、お客様に商品を出来る限り安く提供することにより、来店客数増をはかり、売上アップをはかります。
そのためには、コスト全般の無駄や作業の無駄をなくし人件費を中心とする経費率を下げ、その分値入を低く設定します。
荒利益率予算を低く設定しますが、人時売上高は高く、結果として人時生産性は高くなります。

2のタイプは、接客や陳列・演出、調理など手間のかかることをあえてやる店です。
人時売上高は、必然的に上がりにくくなります。しかし、基本的に荒利益率を上げる戦略ですから、人時売上高が低いとは限りません。

上記のように、戦略が違えば人時売上高はそれによって、変わってきます。但し、2のタイプの店であっても、作業改善は他のタイプと同じように実行し、生産性を上げていくことに変わりはありません。


人時売上高の上げ方


人時売上高の実績数値を上げるには、
  1.売上を上げる
  2.作業改善とシステム改善をおこない投入人時の削減をはかる
ことが必要です。

業務改善の上から、ここでは、作業改善とシステム改善についてお話いたします。

通常、作業改善の初期段階には大きな変化(改善)が起こります。
単純に無駄な在庫や作業や手順の変更、道具の変更などにより、徹底して無駄を無くしていくからです。

効果的なポイントとして5つあげておきます。

第1に、過剰在庫の削減です。

過剰在庫は、移動や先入れ先出し、値引きや廃棄、伝票処理、などなど利益につながらない、多くの無駄な作業が発生し、それに人時を使ってしまいます。
先ずは、バックルームの在庫、そして、売り場の死に筋商品の在庫を削減すれば、結果的に多くの無駄な人時を削減できます。

そのためには、
  1.個々の商品の発注(仕入れ)量を適正にする
  2.死に筋商品は、早期に見切り処理する
ことが重要になります。

2番目には、作業改善です。

人時を多く使う加工作業や補充作業の改善が重要になります。ポイントは、作業指示書の活用などのソフト面の仕組みと従業員一人ひとりのスキル・アップの問題です。

作業指示書(特に加工用・補充用・陳列用)は、効果的な活用をするだけで、使っていないチームより1から2割程度の人時削減の効果が多くの場合見られます。また、指示書の活用は、人時削減だけではなく、欠品削減や売り場の充実などによる売上や荒利益アップの効果も期待できます。

作業指示書(加工用・補充用)の重要な点は、優先順位の策定とチームでの共有化です。
「必要なものを必要なとき、必要な量だけ加工(補充)する」という事が実行されれば、売上アップと人時削減という大きな改善に繋がります。

従業員一人ひとりのスキル・アップの自体的ポイントとしては、
  1.カートの効果的活用
  2.両手作業(加工、補充時)の徹底
  3.手順や道具の変更
  4.定位置管理の徹底
  5.情報・データの効果的活用
などを改善することになります。

3番目としては、1と2が改善した段階で、稼動計画を作成することです。

稼動計画には、多くの種類があります。
  1.年間稼動計画・・・年間の稼働時間の予算(年合計、月別)を設定するもの
  2.月間稼動計画・・・月間合計と日別の人時計画をたてるもの
  3.日別・曜日別稼動計画
             ・・・個人別・時間帯別に具体的稼動計画(作業担当決め)をたてるもの
というような内容です。

期間別の売上予算と販売企画別や単品別の予算を立てるのと同じように、人時の効果的投入計画と日々の具体的個人別の計画を策定します。日々の管理と必要に応じて、現場の判断で適時変更を行い、月間や年間の人時予算を達成します。

4番目に、アウトソーシングを検討です。

アウトソーシングとは、製品やサービスを社内で調達するのではなく、他の企業から調達することです。
企業が戦略部分に特化し、アウトソーシングで浮いた人時を商品開発や社員教育・訓練、推奨販売や効果的な販促ツールの作成などに焦点を当てて、売り場のレベルアップ(売上アップ)をはかるために行ないます。

特に、生鮮部門の商品のアウトパック(切付け、盛付け、包装、値付け、調理など)や物流(買い付け、小分け、振り分け、積み込み、配送など)が大きな効果をもたらします。

専門知識や技術を持った企業にお手伝いいただければ、社内で行なう場合より出来映えの向上やコスト削減効果も期待できます。


5番目に、店舗レイアウトです。

荷受場や搬入口の位置やバックルームまでの搬入通路の距離、バックルームから売り場までの距離など、設計の段階で科学的に検証し、無駄や無理の少ないレイアウトにする必要があります。
また、各部門のバックルーム内の調理機器や作業台、冷蔵庫や棚などといった設備や什器の設置位置も大変重要な課題です。
バックルーム設計の勘所は、出来るだけ「移動距離を減らす」工夫をすることです。

レイアウトに問題があれば、何年も無駄な作業人時を使い続けることになります。
専門のコンサルタント(特にサミットリテイリングがお奨めです・・・笑)などに設計段階でアウトソーシングを行なうことも考えるべきでしょう。


念のため


企業によっては、数値改ざんが見られることがあります。例えば、人時売上高を算出するのに、担当者のサービス残業の時間をデータに入れずに計算している場合があります。そうすれば、数値上は多少良いように見えますが、実際には何の意味もありません。

先述しましたように、人時売上高は、個人と組織の生産性をみる大切な数値です。正味で高くなれば、基盤の部分が強くなり、より競争力がアップするということです。うそのデータを眺めていても何のメリットもありません。
中年のおじさんが、人間ドック前の数日間お酒を飲むのを我慢して、血液検査のデータを適正数値に近づけようとすることと同じことです。そのとき一時的に良くても、何のメリットがあるでしょうか。
真の体力を身に付けなければならないのです。体力がつけば、色々な可能性が開けてきます。現場で働く社員の利益も大きくなり、チーム力も確実にアップします。

とにかく、改善活動を直ぐにスタートしましょう。正しいやり方、正しい方法で・・・。


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■生産性の向上に舵をとれ! ⇒http://www.summit-rc.com/blog/2770/
■会議の生産性アップで、スーパーマーケットが変わる! (前編)www.summit-rc.com/case/2714/
■会議の生産性アップで、スーパーマーケットが変わる! (中編)www.summit-rc.com/case/2724/
■会議の生産性アップで、スーパーマーケットが変わる! (後編)www.summit-rc.com/case/2719/

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