スーパーの業務改善入門

2016年10月26日

合成の誤謬(ごびゅう)・・・間違ってはいけない重要なこと


10年ぶりに再度コンサルティングを開始した、クライアント先での話です。

そのクライアントの社長は、創業者の息子さんで就任4年目を迎えていました。
品揃えや売り場づくり、店舗運営など、現状の多くに危機感を感じて、業務全般の見直しの必要性を感じていました。
しかし、どうやったら良いのか、「やり方がよく分からない」ということで、弊社にコンサルティングの依頼をいただいたのです。

売ることについては、店舗立地に恵まれ、過去の成功法や優良店のやり方を真似してやって来ました。
しかし、競合店との競争や集客の問題。そして、目先の売り上げが欲しいあまりの安売り合戦で、ハッキリ言って、あまり利益が残っていません。
このクライアントに限らず、中小零細のスーパーマーケットや小売業においては、同様の悩みを抱えている人も大変多いと思います。

また、訪問の折に、現場のオペレーションや仕組みに目をやると、とても効率が良いとは言えません。
原理原則を学んでいないことが覗えます。


「加工するときは、1パックずつ別々にやったほうが早いですよね」


加工作業の話していた時に社長が、「加工(商品化)するときは、盛り付けや包装と工程を分けてやるより、1パック一ずつ片付けたほうが(作業は)早いですよね」とおっしゃいました。
社長は自ら、現場でストップウォッチを使って測定したというのです。

私は過去に、他のクライアント(リージョナル・チェーン企業)からも同じことを聞いた覚えがあります。
その企業は、トヨタの生産方式を取り入れて改善しようというものでした。確かに間違いないのでしょう。
動作レベルではその方が良いのだと思います。

しかし、ここに大きな問題が隠れています。


高い生産性は、段取りで決まる


私は、作業改善を考えるとき、準備作業と後作業(補充や保管など)、そして、それらの流れ全体として捉えています。
どういうことかと言うと、スタートからゴールまでのプロセス全体を管理するということです。
手や足の動作の集合したものが、一つの作業であるのです。そして、作業の集合体が業務です。

それに、いつ、どのタイミングで、どこで、どのような道具を使い、誰が(スキルや体力差など)というように、多くの要素が複雑に絡み合い、一つひとつの作業や業務が出来上がっています。
動作は、それらの中のほんの一握りのことでしかありません。

作業指示や重量物の移動、体力を要求される硬い原料の切付け作業などというような、いわゆる作業の『段取り』が、全体的な作業時間に大きく影響します。



合成の誤謬」


細部の一つひとつのことに焦点を当てて、最適化を考え、それが実現できたとしても、それらの総和が必ずしも良い結果(最大の成果)とならないことがあります。これが、合成の誤謬です。

そして、「どこを変えたら(工夫したら)、早く楽に、そして、出来栄えが良いのか」が本質的な問題なのです。
このことが抜けてしまうと、真の業務改善に繋がらない場合が多いのです。


販売計画などでも、冬場の重点アイテムであるイチゴの売り上げを伸ばそうとした時に、豊の香(イチゴの品種)を伸ばそうと考え、実行した結果、 「豊の香の売上は200%伸びたけれど、イチゴ全体は大して伸びなかった」というような時にも同じことが言えます。

要するに、
「気を見て森をみず」
「戦術におぼれ、戦略とその目的を誤る」
ということにも繋がることです。

細かいことが大事では無いということではなく、
大枠(コンセプトや戦略)を理解してから、細部(戦術)を選択して、優先順位をつけて行動するということです。
結果を確実に出すためには・・・です。

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