スーパーの営業戦略入門

2013年04月15日

梅雨時のロス対策・青果部門【食品商業5月号】掲載

ロスを考えるとき、まず、その意味をよく理解することが重要です。

商品に関わるロス(損失)には、

①欠品や品切れによる機会(チャンス)ロス
②値引きや廃棄などや汚損、破損などの商品管理(数量、品質)上のミスによる商品ロス

などがあります。
また、試食販売や調理見本などのサンプルなど、損失というより投資の意味合いのものも数値上は、ロスということになります。

商品ロスは、言うまでもなく、目標の売上と荒利益を低下させてしまいす。

機会ロスは、単純に売上高と荒利益高の伸びをストップさせてしまいますが、最も重要なことは、欠品や品切れによって、お客様の期待を大きく裏切ること(不満)にあります。

売上不振につながる要因の重要課題です。そして、それは、POSデータ(定量データ)として、記録が取れませんので、現場での確認作業とスピーディな改善が必要です。

その他に押さえておきたいロスは、人時ロスです。

作り過ぎや出し過ぎ、それに関わる値引き販売のための作業など、担当責任者の管理不足からくる、作業担当者もお客様もメリットの無い作業時間のロスです。


■機会ロスの意味の理解と改善行動

「有ったら売れたのに・・・」というのが機会ロスです。

①在庫量が少ないための、定番品の欠品
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 ※欠品は、売上、荒利益ゼロ。売上、荒利益対策の最重点事項

②市場で売れているのに、仕入して品揃えしていない場合

③提案の仕方を変えたら売れるのに、従来の方法で販売しているために売れない状態
など、文字通りチャンスを逃していることを指します。

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◆トマトとバジル(ポット)。料理と園芸。“2度、3度と楽しい”を売る


改善行動としては、

①開店時100%の品揃え(欠品ゼロ)の実現
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※開店時100%品揃えは、お客様とのお約束

②閉店時(夜間)の品揃え基準の設定と順守

③売れ筋品(販売数の多い物)の陳列量を増やす

④優良店調査やインターネットやテレビなど調査を行い、情報収集による新規商品の導入

⑤商品特性など商品の持っている価値をPOPなどで、十分にお客様に伝える

⑥インターネットのレシピー関連サイトなどを活用して、新しい食べ方、使い方の提案をする
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◆とうもろこしの調理を電子レンジで“簡単便利”提案

などを積極的に実行することです。


また、作業面では、

①作業指示書を活用し、適時の商品加工や補充作業にあたる
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※作業指示書を事前に作成して、欠品や作業の遅れを無くす

②担当者の作業スキル(制度とスピード)を訓練し高位に引き上げる

③補充時のカートを効率的、効果的に使う(適正な積込量、両手作業など)

④POSデータを活用し、仕入れ量、陳列量を適正化する

なども改善の要素として重要です。


■商品ロスの意味の理解と改善行動

ロス金額では、値引き金額と廃棄金額に分けることが出来ますが、重要なことは、額の上で、値引きロスより廃棄ロスが少ないことです。廃棄ロスが多い場合は、値引き処理のタイミングが遅いことや、見切り処理を適正に実行していないことなどの原因が考えられます。要するに、商品の品質と数量の管理不足であることを表します。

<商品チェックと処理作業のポイント>
①売る側の「売れるか売れないか」や「これくらい大丈夫」ではなく、お客様が「買うか買わないか」で判断する
 ⇒色目が悪い、小振りな残品、小傷のあるもの、軽微な鮮度低下品など

②定時(基本的に午後のピークタイム前)に徹底して行い、早期に見切り処理する
 ⇒チーフ(または、同程度の能力を持つもの)が高位の目利きで実行する
 ※全員でやることは、各個人のレベルの差でチェック漏れが多く発生する危険性が高いので原則禁止

③支持率の高い商品は、2~3割引き、支持率の低い商品は、半額値引きにて短時間
で処理

また、高温多湿の時季は、特に数量管理(ユニット・コントロール)と品質管理(クオリティ・コントロール)が重要になります。


数量管理では、

①直近のPOSの販売数量データを定期的に確認して、仕入数量設定に生かす

②特に平台の陳列量を、商品特性に合わせて調整する

※店内在庫量の目安・・・(前日在庫量+当日入荷量)÷当日販売予測量
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※陳列量の目安(平台陳列)
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品質管理では、

①葉野菜や果菜、いちごなどを中心に、入荷品の検品を入念確実に行う

②入荷品に入荷日をマジックペンで大きく記入し、「見える化」する
 ※残品は、基準日内に即日売り切る(原則D+1~2程度)

③平台で陳列しているものは、原則即日売り切る
(夜間は、冷蔵ケース内で別のものを販売)

など、管理を徹底します。

その他、現場で重要なこととして、入荷品の品質が悪い場合のベンダーとの付き合い方があります。基本的にベンダーは、大切な協力者です。
しかし、この場合、担当チーフは、厳格にその処理に当たり、馴れ合いになることがあってはいけません。こちらが望む品質をベンダーに解ってもらう意味でも、“値引き”ではなく、“返品、交換”を貫きます。

お客様に、高品質の商品をお届けするための真の協力体制を築きましょう。


■小技を使って、ロス削減(荒利益アップ)

野菜では、定額販売のキャベツの玉売りや大根の1本売りなど小振りの物は、そのまま大きなものと一緒に陳列していれば、営業時間の経過とともに値引きの対象となります。1/2や1/4などにカットして、SKU(売体)を変更して販売するとロスも低下し、場合によっては、値上げができます。
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※小ぶり、変形の大根は、売れにくい。早めに加工処理

果物では、グレープフルーツなどの皮にハリが少し低下したものや小振りの物は、売れにくくなります。売場から早期に引き上げて、カットフルーツにして商品化します。付加価値を上げることができ、確実にロス率を抑えて、荒利益を改善します。(量的に多い場合は、即時の値引き販売)
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 ◆簡単便利のニーズとロス改善。Win-Winの関係
また、このことによって、売場が活性化し、結果として相対価値が上がり、販売量も伸びる可能性が高くなります。


■積極的な試食販売で“戦略的ロス”(投資)を出す

商品ロスや機会ロスの他に、試食販売でのロスがります。

基本的には、味の良い野菜や果物を中心に、その特徴(美味しい理由)をお客様にお伝えしながら、有人で行います。このロスは、商品ロスや機会ロスとその性質がまったく違います。

試食販売は、月間で予算化(対象アイテム、金額、人時)して、戦略的に使いたいものです。使った結果は、対象商品のその後の販売金額(数量)のアップを実現するとともに、結果として、ロス率は低下し、売上高や荒利益高のアップに繋がります。

季節の果物の出始めや旬の野菜などを中心に人員配置など計画的に行いましょう。

せっかく良い物を仕入れても、ただ並べているだけでは商品は売れません。先にロスを出して、売上アップを“戦略的に”はかりましょう。


■品切れと予算の理解

商品特性によりますが、例えば、売価100円で、売上高予算3万円のりんごの場合、300個仕入れただけでは、予算達成が出来ないかもしれません。
300個仕入れた場合、290個売れた後の売場の残品10個は、色目が悪かったり、小振りであったり、小傷があるかもしれません。物理的に商品はあるのに、売れない。これが、“品切れ”です。

予算達成のためには、値引きロスを予測して、310個や320個ぐらいの仕入れ量が必要である場合があることを理解しましょう。

その為には、販売計画時点で、商品ごとの品質特性、値入れ量や陳列量、売体(バラ、袋詰めなど)、陳列場所(平台、冷蔵ケース)などを十分考慮して、計画にあたることが重要です。

このように、ロスは、商品ロスをゼロに近づけたら、機会ロスが出るという関係にあります。
各アイテム(SKU)の特性を勘案して、商品ロスをゼロにするのではなく、機会ロスが発生しない様に、適正値を目標とすることが重要であることを理解しましょう。


■顧客生涯価値(customer lifetime value)を考える

『より良いもの、より新鮮なものをお客様にお届けする』。このことが私たち青果部門の担当者の責務です。その日々の行動の積み重ねが、お店の信頼と信用に繋がります。特に支持率(部門客数÷店客数)の高い野菜の品質は、店舗への信用獲得と来店動機、そして売上に大きく影響します。
その意味で、見切り作業は、大変重要な作業です。

見切り作業は、原則売場で行います。バックルームに引き上げての再加工などは、営業利益上のロス(人時、経費など損失)を出す結果となります。基本的に、品質の低下度合いが低いうちに、売場で早期に見切り処理(販売)します。

お客様が、「どうして、値引きしてるの?」と思って頂けるような、“お買い得感”を感じるレベルでの見切り販売をするという、“プロとしての仕事”をします。

一時的に荒利益を低下させてしまっても、次に新鮮なものを販売すれば、すぐにその損失はカバーできます。商品以上に、“信頼と信用”を売る意識で日々行動しましょう。

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