スーパーの経営戦略入門

2008年09月16日

鮮度管理の強化が、一番の効率経営

スーパーマーケットの営業戦略で一番の重要課題は、生鮮部門を中心とする商品鮮度の強化でしょう。そして、それが会社のオペレーション全体に対して、優先されていることが大切であり、結果として、効率的な店舗運営を行うことが出来ます。

お客様に、「より良い商品」を提供するということは、経営理念や新入社員研修などで、多くの企業で教えていることでしょう。
良い商品というのは、先ずは、安全で、新鮮で、品質が良く、美味しい商品のことです。当たり前のことですが、実際にどの程度理解され、現場で実行されているでしょうか。

十数年前と比べて、青果物などの生鮮食品の流通チャネルにおける鮮度管理レベルは、格段に良くなってきています。しかし、店舗での鮮度管理の技術レベルは、企業によって相当な差があるように思います。お店によっては、お客様のクレームの中で、鮮度に関するものが一番多いという店舗もあります。

仕入れや物流、そして、店舗での商品管理レベルの差が、お客様に提供する商品の鮮度を大きく左右します。また、低レベルの鮮度管理や数量管理は、商品に対するトータルの管理コストを、大きく押し上げてしまい、結果的に営業利益が出にくくなります。


鮮度管理によるトータルの管理コストの低減


鮮度を完全な差別化戦略にしている企業があります。
鮮度追求に対する仕入れ基準の強化や流通センター及び店舗における数量管理や品質管理の強化というような社内の取り組みと、近郊の地場野菜や地場鮮魚の導入など外部とのコラボレーションにより、売り場の鮮度追求を行い、圧倒的な差別化をはかる努力をしています。

このように、鮮度を追求すると言うことは、仕入れる商品の品質にこだわるここと同時に、数量管理を徹底し、常に適切にコントロールする必要があります。
複雑な条件の中で計画通り進まない場合も現場では日々発生します。このような場合は、スピードを持って計画の修正(コントロール)を行い、在庫を常に正常値に近づける判断と修正作業が必要になってきます。

一見大変なことに思えますが、この一連のオペレーションが習慣化され、日々実行されていれば、保管や移動などの無駄な作業ロスや商品ロスが確実に減少します。


「お客様の目線で」で管理することの間違い


店舗において「鮮度管理委員会」や「鮮度向上プロジェクト」なるものをよく目にします。定期的に部門毎に代表者が出席して、期間の取り組み課題を設定し、売り場の商品をチェックするというものです。そこで必ず出てくる言葉が、「お客様の目線でチェック」ということです。

グロッサリーを中心とする日付の管理や汚損や破損の確認で十分な部門もあります。しかし、生鮮部門は、それでは不十分です。

野菜や果物は、収穫後も生きていますので、萎れやとろけ、低温障害、過塾などが発生し鮮度が低下します。そして、これらは、商品毎にすべて違う特性を持ちます。その他、鮮魚の刺身や惣菜の天ぷらやフライなどは、時間を追うごとに劣化していきます。このような様々な性質を持った商品の品質や鮮度を素人が判断できるでしょうか。まず無理です。

「お客様の目線」で素人が見ても完全な管理が出来るはずがありません。お客様に信頼していただける商品が提供できるとは思えません。商品をお客様がお買い上げになって、「お使いになるとき」からが本当の勝負なのです。

ましてや、売り場の担当者がチェックした後、念のため他の部門の人も確認するなどということは、時間の無駄です。本末転倒です。売り場で、お客様に「お渡しする時」によければ言い訳ではありません。

私たちは、プロフェッショナルでなければなりません。草野球チームがお客様に対して、商品を販売してはいけないのです。
売り場の担当者が、鮮度チェックのスキルを確実に磨き、責任を持って、そして、自身を持って商品をお客様に提供しなければならないのです。

これくらいの信念で、売り場の責任者は、売り場管理をしなくてはいけません。

お客様の目線程度で管理しているから、本当の信頼が得られないのです。


1日1回徹底して、鮮度チェックを行なう


店舗での鮮度管理のポイントとしては、発注や在庫に関わる数量管理と温度管理や鮮度チェックなどの品質管理が重要です。

特に生鮮部門の生鮮品は、15時前後に徹底して、厳しいチェックの出来る担当者が、消費期限に関係なく、全品を目や手、場合によっては鼻を使ってチェックすることが重要です。
そして、社内鮮度基準に不適合の商品は、売り場からの撤去や即時値引き販売、または、当日売り切りの判断とその為の処理作業の指示を下す必要があります。

以上の行動を手抜きしないで、毎日行なうことによって、お客様から、売り場の鮮度に対する信用と信頼を頂けるのです。

念のために申し上げますが、鮮度管理で常に100点満点を取れといっているのではありません。現実的に無理です。
例えば、社内の基準を策定し、
 60点未満を絶対に出さない努力が重要です。
 そして、60点や70点を確実に取れるようにする。
 そして、徐々に2点、3点というようにレベルを上げていくのです。

「これくらいだったら」というような、甘い管理では、お客様の期待には応えられません。

賞味期限を1日残して、売り切る


私が指導させていただいている企業の店舗では、生鮮品やデイリー商品は、消費期限の1日前に売り切るということを徹底してもらっています。消費期限当日の販売は、原則禁止です。

これは、お客様が、買っていただいた商品を、消費期限までに使い切っていただくための気遣いです。商品の法的な管理基準ではなく、企業独自の販売管理基準です。

そのため、売り場の担当者は、発注や在庫管理、そして、見切り処理という一連の商品管理のスキルが確実に向上していきます。

企業努力の正しい方向性


スーパーマーケット企業には、流通業としての営業利益の出し方について、理解が浅い会社が多いように思います。

流通を分類すると、商流、金流、物流、そして情報流通に分類されますが、現場でのオペレーションは、言うまでもなく物流が大きく関係します。

 鮮度を重視する運営は、必然的に在庫量を適正化します。
 在庫が適正化されれば、自ずと無駄な作業が激減します。
 作業が激減すれば、作業時間が削減されます。
 作業時間が削減できれば、人件費が削減できます。
 また、作業時間が削減できれば、付加価値業務に時間を割り当てられます。
 付加価値業務に時間を割り当てられれば、売上や荒利益の向上が可能になります。
 基本的には、「お金を一切使わなくても」です。

営業利益の素が鮮度管理にあるといっても過言ではないと思います。

スーパーマーケットの基盤である鮮度管理について、今一度、現場の実地検証をしてみてはいかがでしょうか。

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