コンサル・こぼれ話

2008年09月29日

商品を売るということ

先日、指導先の現場で、とても感心させられる場面に遭遇することが出来ました。それは、精肉部門のことです。

私がアドバイスをしている業務改善チームのリーダーが、精肉部門の冷蔵庫の在庫を確認していたときに、ある在庫に目を留めました。それは、ロースト・ビーフの大きなブロックです。良く見ると消費期限が数日に迫ったアウトパックの商品で、数パックあります。

CIMG1611.JPG

通常はスライスして、トッピングを施し、調味たれをつけて販売する商品なのですが、とても通常の販売方法では、さばききれません。

そのリーダーは、精肉部門のスペシャリストでもあります。すかさず精肉部門のチーフに命じて、ロースト・ビーフの大きなブロックを小さいブロックに小分けカットさせ、お買い得価格で値付けをさせました。そして、開口一番、「チーフ、売り場で全部君が試食販売で売り切りなさい」の一言。チーフは、「私がですか」と言わんばかりに、呆気にとられていました。

売り場では、冷蔵平ケースで展開しPOPを付け、試食用にスライスしたロースト・ビーフをチーフが慣れない手つきで、「ロースト・ビーフいかがですか」と売り出しました。しかし、夕方のピークタイムの忙しい時間帯でありながら、ロースト・ビーフは一向に売れません。

■ プロフェッショナルの力

しばらくの間、リーダーはチーフの様子を眺めていましたが、売れる様子が無いためチーフと交代しました。

「こんにちは、いらっしゃいませ」
「切りたてのロースト・ビーフでございます」
「ご試食だけでも、していってください」
と、爪楊枝に刺したロースト・ヒーフのスライスをお客様に笑顔で優しく差し出します。
「どうぞ、どうぞ、ご試食だけでも・・・」
直ぐに数人のお客様が、リーダーの回りに集まりました。

お年を召された、ベテラン主婦らしき女性
若い、新婚さんらしきカップル
1人暮らしかと思える、若い男性会社員や女性
などなど・・・・

「このロースト・ビーフは、無添加で・・・・」
「そのまま食べて頂いても、結構ですし・・・」
「専用のたれと西洋わさびが付いておりますので・・・お好みで・・・」
そして、
「お肉には、繊維がありますので、この様に繊維をきるように・・・こうカットすると軟らかく美味しくいただけます」
「普通のブロック肉を買っていただいたときも・・・このようにカットしていただくと・・・」
とお客様にお肉の美味しい食べ方のテクニックを披露していました。
お客様は全員、リーダーの説明にじっと聞き入っています。

お客様は、「このお兄さんが言うんだから、間違いないわね」と、次々に買っていかれました。お客様の中には、2、3パック手にされた方も何人かいらっしゃいました。

私は、久々にプロフェッショナルの仕事ぶりを拝見させていただきました。そして、私自身もお客様と同じように、とても満足な気持ちにしていただきました。

■ お客様の満足

この日、来店されたお客様は、とてもラッキーだったでしょう。
プロフェッショナルの講義をただで聴けたし、普段経験できないことをいつもの売り場で経験したのですから。

具体的には、
  1.「美味しい商品」を教えてもらったこと。
  2.家庭でカット調理するという、「楽しい体験」を提供してくれたこと。
  3.肉の「専門知識」と「カット・テクニック」など、普段聞くことの出来ないことを教えてもらえたこと。
  4.そして、プロフェッショナルから商品を買ったこと。
などがあげられると思います。

スーパーマーケットでは、マネキンのプロフェッショナルとは良く出会いますが、商品のプロフェッショナルとはなかなか出会う機会が無いように思います。
また、セルフサービスは、無機質なノン・サービスだと勘違いしている人も沢山います。

■ 部下を育てるということ

このときのリーダーの行動により、チーフは、とてもすばらしいO.J.T.を受けたと思います。

試食販売の技術がうまいだけではなく、
 1.商品の売り方の工夫
 2.商品を大切にする心
 3.信頼される店になるための努力
 4.お客様の期待を超える、小さな感動のある売り場づくり
 5.「また、来たい」と思っていただくお店の努力の方向性
 6.チーフとしての時間管理
など、あげればきりがないでしょう。

そして、何と言ってもプロフェッショナルとしての仕事ぶりです。

山本五十六の「やってみせ 言って聞かせて させて見せ 褒めてやらねば 人は動かじ」という素晴らしい言葉がありますが、最近現場では、「言ってるんですけどね」と嘆くリーダーがあまりにも多いように思います。

私は、この言葉を口にした役員やリーダーには、「じゃ、あなたは、チームには要らないね」と脅かしてやります。

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