スーパーの業務改善入門

2008年10月30日

人時売上高を戦略と算数で理解する

私が「人時売上高の向上」にこだわっているのは、スーパーマーケットの現場における生産性の低さに常々問題を感じているからです。

大手企業のPB開発やマス化によるバイイング力アップと低価格の実現。これらに対抗するのは容易なことではありません。
しかし、本質的なことは、目に見えている売り場での現象ではなく、外からは目に見えにくい、生産性の低さが中小企業の問題なのです。

ルーチンの繰り返しによる、何の変化も無い売り場。やり方が悪い作業手順や方法による、追われっぱなしの日々の作業。結果として思考停止状態。
「うれしい、楽しい、美味しい、簡単・便利、安い・・・」を感じられる売り場作りなど出来るはずがありません。

生産性が低ければ、従業員の給与ベースも低くなってしまわざるを得ません。社員の給与は、他業種の会社や競合他社と比べて、地域一番でありたいものです。
給与が高ければ、日々の仕事に対する現場の社員の「意欲」や「やる気」も向上するでしょう。

生産性が低ければ、会社の利益も出にくくなってきます。
現状の経済状況や競合状況、そして少子高齢化といった構造上の問題など厳しい環境の中で、ほとんどの地域、会社において売り上げの低下や利益の低下など深刻な問題を抱えています。


人時売上高に関わる数字の理解


しかし、考えているだけでは、何の解決にもなりません。
これまで手をつけてこなかった、生産性の問題に対して正面から向き合って、改善行動をスタートしなければなりません。

  ※具体的な改善行動については、先述した
    『人時売上高を上げる26の法則(1)、(2)』を参考にしてください。

ここでは、人時売上高を向上させる目的と意味を理解していただきたいと思います。

「実践なき理論は空虚であり、理論なき実践は無謀である」という有名な言葉がありますが、算数の正しい理解をしていなければ、正しい効率的な行動が取れなくなる危険性があります。

お客様に、
 ・商品を少しでもお安く提供すること
 ・商品やサービスに今まで無かった付加価値をつけて提供すること
が『私たちの使命』です。

そのためには、根本的な部分をしっかり理解して、行動を取る必要があります。


1.人時売上高


 = 売上高 ÷ 投入人時

個人と組織のオペレーション・スキル(運営能力)の結果数値のことです。
昔からのやり方を続けているだけでは、個人の作業に対する慣れによる動作のスピード・アップにしか期待できません。
根本的に物流などのシステムの見直しと現場の作業全般(手順、方法、道具など段取り全般)の見直しが必要です。

人時売上高が高くなれば、売上高の向上や営業利益の向上は、ぐっと近くに引き寄せることが出来る可能性が高くなります。
なぜなら、人時売上高が高いということは、荒利益率を戦略的に低く設定できるからです。

例えば、人時売上高が50,000円のグロッサリーチームは、荒利益率が18%でも、人時生産性は、9,000円を上げることが出来ます。

  50,000円 × 0.18 = 9,000円 *** Aチーム

一方、人時売上高が30,000円のグロッサリーチームは、荒利益率が25%で、人時生産性が、7,500円です。

  30,000 × 0.25 = 7,500円 *** Bチーム

ただ、このBチーム場合、現実的に25%の荒利益を中小のスーパーマーケット企業で上げることは、難しいのではないでしょうか。

Aチーム、Bチームとも仕入れの条件が同じならば、お客様からの価格に対する支持は、圧倒的にAチームの店になるでしょう。
また、Aチームは、生産性が高いことから、尚一層値入を低く設定することも可能になります。競争力は益々アップします。


2.人時生産性


 =  荒利益高  ÷ 投入人時 *** A式
 = 人時売上高 × 荒利益率 *** B式

付加価値生産性のことです。

数式の通り、投入した1人時に対して、荒利益高をいくら稼ぐことができたかを見る数値です。

大きく分けて、惣菜タイプ(荒利益率重視型)とグロッサリー・タイプ(投入人時削減型)に分けて考えると解りやすく、採るべき行動もハッキリしてきます。

荒利益率重視型の惣菜部門では、レシピーを研究し、「鍋・釜・包丁」を使って、競合店に真似の出来ない、お弁当やおかずなどの「美味しい惣菜」をお客様に提供できれば、荒利益率を50%、60%、またそれ以上と高く確保することが可能でしょう。

例えば、荒利益率が50%であれば、人時売上高8,000円でも、4,000円の人時生産性になります。

  8,000円 × 0.5 = 4,000円

注意しなければならないのは、グロッサリー部門との人時生産性の数値の開きです。
グロッサリー部門には、加工作業とそれに関連する作業がありません。商品は、基本的に出すだけです。値付けもほとんど必要ありません。
惣菜部門の強みは、「付加価値の提供」にあります。独自の売り場づくりや商品化で勝負です。

つまり、手間ひまを掛けて、荒利益額を上げるタイプです。上記のA式をイメージしていただくと分かりやすいと思います。

もう一方は、先述したグロッサリー部門のように、陳列演出の技術やこだわりはありますが、基本的に、陳列作業や補充作業などを手早く行ない、投入人時削減型で人時投入を低く抑えるタイプです。

手間ひまを掛けないで、売上を上げるタイプです。上記のB式をイメージしていただくと分かりやすいと思います。

しかし、最近、都心部や一部の地方都市においては、惣菜のアウト・ソーシングが盛んに行なわれています。
専門業者の技術革新による完成品やキット商品、加工素材などの供給により、店舗の作業工数が極端に少なくて済む方向になってきています。
このような場合は、従来の惣菜部門と違い、人時売上高も確実に上昇しています。各社とも、今後検討する意義は十分にあると思います。


3.労働分配率


 = 人件費   ÷ 荒利益高   × 100 *** C式
 = 平均時給 ÷ 人時生産性 × 100 *** D式

稼いだ荒利益高に対する人件費の割合のことです。(上記、C式参照)
会社の安全(安心)な運営、そして継続性を考え、低いほうが望まれます。

現場では、直接管理すべき数値ではないと思いますが、会社の経営上は重要な管理数値です。

現場では、上記のD式の理解はしていただきたいと思います。
平均時給は、正社員、パート社員、アルバイト社員、チーム全員の単純平均時給(会社で人件費とみなす部分の合計÷総人時)です。

人時生産性が高ければ、労働分配率は低くなります。
部門の特性や店舗ごとの売上規模などによって数値は異なりますが、店舗で見た場合、50%を超えてしまうと、危険水域です。望まれるのは、30%台でしょう。


規模の大小ではない


社員の給与の向上、会社の利益の向上、そして継続発展のために、生産性を向上させなければなりません。

生産性が向上すれば、「売り場の付加価値向上」のための行動を取ることが出来るようになります。
計画を組み目標を設定し、確実に実行すればお客様の支持も確実に高まります。今までの繰り返しではなく、「次は何をやる」という思いで売り場作りをすれば、確実に活性化します。
アイデアは無限に存在します。


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■生産性の向上に舵をとれ! ⇒http://www.summit-rc.com/blog/2770/
■会議の生産性アップで、スーパーマーケットが変わる! (前編)www.summit-rc.com/case/2714/
■会議の生産性アップで、スーパーマーケットが変わる! (中編)www.summit-rc.com/case/2724/
■会議の生産性アップで、スーパーマーケットが変わる! (後編)www.summit-rc.com/case/2719/

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