スーパーの営業戦略入門

2014年02月03日

消費税増税・対策の考え方と行動(1)

いよいよ、今年4月1日から、消費税率が5%から8%に引き上げられる。そして、その1年半後の2015年10月1日には、10%に再度引き上げられる予定である。
また、総額表示の特例(税抜き価格表示)は、2017年3月31日までであることも理解しておく必要がある。

小売りの現場では、
・3月31日までの駆け込み需要とその反動に対する対応
・プライスカードの差し替えやPOP作成による作業工数の増加とコストの問題
・POSやプリンターなどの各種システムのプログラム変更
・関連法の理解と順守
・増税以降の買い控えによる売上低下と資金繰りの問題
など、頭を悩ませる課題は多い。

しかし、消費税率変更に伴う、プライスカードの差し替えやシステム変更など、目先のことに捉われて、お客様の視点、マーケティングの視点を見失ってはいけない。いわゆる、木を見て森を見ない状態にならないことを注意したい。

前回の消費税率アップ(税率5%)の後、半年程度は、買い控えにより売上に影響があったと言われている。しかし、それは、現状の経済状況や国の経済対策、業種業態、そして何より、個店の対応によって、その影響は、大きく異なると考えるべきであるし、変えられると考えるべきである。

ここで、決して忘れてはいけないことは、お客様の視点である。この機会を一連の処理対応に終わらせることなく、前向きに捉え改めて、

・買い易さの追求
・新たな商品やサービスの導入
・新たな生活提案の実施
・既存の商品やサービス方法の見直し
など、売場やサービスの魅力度アップを考えて、新規顧客の獲得や既存顧客の顧客生涯価値(客単価)アップのための改善活動を計画的に実行して頂きたい。
要するに、悲観的に考えず、前向きに考えるべきである。

ピンチこそチャンス。商売の理念である、「お客様のためになるものを売る」ということを、今一度問い直して行動したい。

戦略的値入れ計画・・・商品やサービスに、値頃感は、あるか?


<グロサリー品と生鮮品の戦略的値入計画(相乗積の活用)>
スーパーマーケットなどでは、加工食品や日用雑貨など、NB(ナショナルブランド)を多く扱うグロサリー部門と、青果や鮮魚、精肉、惣菜を売る生鮮部門とに分けて考える。
この場合の営業戦略としてのポイントは、『絶対価格』と『相対価格』の理解である。
競争戦略上、何処でも販売しているNB商品の価格は、他店との単純比較になるので、出来るだけ競合店に売価を合わせる努力が必要である。(絶対価格・・・売価の単純比較)
特に、増税に伴うNB商品の売価設定については、中小零細企業は、競合店との更なる価格競争に伴う、値入れの低下という、厳しい現実が予想される。

しかし、その反面、品質の高い生鮮品やこだわりの加工食品など、質の高い商品やサービスは、自店の独自色を出せる部分が多々ある。 品質や製法などこだわりや産地や生産者などの特徴を、POP等の販促物を活用して、ちゃんと説明して、お客様の納得を得られれば、高値入れは充分に可能である。(相対価格・・・値ごろ感や価値観の追求)
お客様の支持を得られる魅力的な品揃えや売場作り、そしてサービスの提供が、新たな売上を作り出す。
これらのことを考えて、グロサリー部門と生鮮部門との値入ミックスを戦略的考えれば、全体としての荒利益の確保、拡大は、十分可能である。

このように、スーパーマーケットと同様、取扱品目が多い業態では、同じような方法で戦略を組み立てられる。

<コモディティとノン・コモディティの理解と、戦略>

上記ナショナルブランドのように、誰でも知っている商品(コモディティ)を誰でも知っている方法で売ると、確実に売価(値入れ)は低下する方向に向かう。
増税後は、確実にそれに拍車をかけることになることが予想される。

中小零細企業は、大手やディスカウント・ストアと同じ土俵で戦わないためにも、うちしか取り扱っていない商品、うちならではのきめ細かなサービス(ノン・コモディティ)に、ウエイトを置いて活動すると、コストもあまりかけなくても、確実に顧客の支持を獲得できる。

USP・・・商品価値は、十分に伝わっているか?


上記の生鮮品やノン・コモディティの事例のように、いくら良い商品を品揃えしていても、お客様に対して、そのUSP(Unique Selling Proposition=独自の売り)が、伝わらなければ、その商品やサービスで、高い荒利益を確保することはできません。
競合他社との差別化や優位性を確立するために、その商品やサービスの『独自の売り』を、お客様に対して充分にPOPの掲示や試食など、売る側の具体的行動でアピールすることが重要である。
お客様にとってのメリットやベネフィット(ご利益)、それを裏付ける特徴などを確実にお伝えし、

・商品を選ぶ際の理由づけを伝える
・お客様の体験価値を十分想像できる様にする

ことが求められます。
今一度、売場の見直しを行い、確実に行動することが、確かな成果を生む。

予想される混乱・不満


とはいえ、増税が現実のものとなれば、現場では、お客様からの質問など、各種の対応を求められるものと考えられる。

何といっても、消費者は、総額表示に慣れてしまっている。
ですから、『本体価格のみの表示(外税)』をする場合、売り場で見る価格と、実際にレジで払う金額が違うことから、お客様の誤認や混乱が起こることが考えられる。
この対応としては、法令的にも、店内各所にその旨のPOPを掲示する(各売場、レジ周りなど複数)ことを指導されている。また、店内放送などをこまめに行いうなど、モラルの上からも、徹底して対応して、お客様の混乱を和らげる行動が求められる。

また、便乗値上げのことについても、消費者の目は向けられるものと考えられる。
しかし、現実的に、現状そのままの総額表示の価格を転換すれば、多くの場合値頃感を失う。
例えば、現状、税込1,980円で販売されている商品の場合、本体1,886円、税込2,037円(何れも四捨五入計算の場合)となる。これでは、全く値ごろ感を感じない売価となってしまう。
かといって、本体1,980円では、値上げになるし、税込1,980円では、販売側の荒利益が低下してしまう。
対策としては、早期に値入れの調整を行い、売価変更を実施することである。増税以前に、値ごろ感と全体の荒利益を考えた、外税、内税双方の売価(値入)設定および、変更を行うことである。

必要な従業員教育


重要なことは、何といっても、法令の熟知がある。お客様に対して、現場の担当者の曖昧な対応にならないために、事前の従業員教育を繰り返し徹底して行うことが重要である。
具体的には、国税庁や財務省、日本商工会議所等の冊子やホームページを見て活用して頂きたい。法令は基より、Q&Aの部分についても、熟読をしていれば、お客様に対して、スムーズな対応が出来るものと考える。
お客様の不信を招かないためにも、これでもかの準備を行うことをおすすめする。
関係資料は、コピーを取るなどして、社内研修を実施し、ポイントを絞った自社のマニュアルを作成して、配布することを強くおすすめする。

【関連記事を紹介】
続き:消費税増税・対策の考え方と行動(2)http://www.summit-rc.com/blog/business/678/

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