スーパーの営業戦略入門

2013年06月16日

利益を理解する・青果部門【食品商業7月号】掲載

営業管理レベルでは、荒利益(売上総利益)と売買差益、営業利益といった、「利益」の付く用語が有ります。部門レベルでも、その意味を正しく理解し、戦略的に活用することが重要です。
しかし、現場で多い間違いが、
①荒利益と売買差益の混同
②荒利益を儲けだと思っている
③“荒利益率が高い=儲けが多い”、と思い込んでいる
ことなどです。特に③は、全くの間違いです。荒利益率の高い、総菜部門が営業赤字のスーパーは多くあります。
営業活動の“儲け”の計算式は、営業利益(儲け)=荒利益高-営業経費です。
荒利率(高)が低位でも、経費をそれ以上に低減できれば、営業利益はアップします。
実はここに、販売戦略上の重要なヒントが隠れています。特に、お客様からの支持が高い野菜売場での戦略策定は、その売り上げに留まらず、店舗の集客(売上)にも大きく影響を与えます。

■野菜は、高・品質、低・値入で、高・営業利益を狙う

野菜は、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンターなど他業態との競合において、差別化戦略上、最重要部門です。野菜は、スーパーマーケットの売場の中で支持率(部門客数÷店舗客数)が最も高く、その売場の鮮度、品揃えなどの充実度は、日々の店舗の来店客数を大きく左右します。
野菜は戦略的に、高品質、低値入れ、低荒利、低コスト、高売上、高営業利益を狙います。
お店の売上を上げるための3つのポイントは、
1.購買客数を増やす
2.購買頻度を増やす
3.客単価を増やす
ことですが、販売している商品が高鮮度、高品質で、低価格であれば、高い支持率を上げる可能性が高くなります。結果的に、2の購買頻度を増やすことに繋がり、また、口コミなどから、1の購買客数を増やすことに繋がります。
また、商品を安く販売する為には、営業経費で断トツに高い人件費の費用対効果を高める必要があります。その意味で、人時売上高をアップすること、そして無駄なロスとコストを削減するという日々の業務改善の積み重ねが重要です。

■じゃが芋、玉ねぎの袋詰めなど、店内加工で荒利益率を上げて、儲かっていると思ったら大間違い
青果部門の荒利益率は、20%以下から30%以上と企業によって様々です。荒利益は、地域性、競合状況、営業戦略、担当者のスキルなどにより、異なります。
また、営業利益では、一般的に生鮮部門の中で、精肉部門に次いで二番目の営業利益を稼ぎ出す部門です。
例えば、荒利益高だけを目的にしていれば、じゃが芋や玉ねぎなど、バラの商品を仕入れて、店内で加工した方が、値入幅は大きくなり、荒利益率は高くなります。
しかし、この場合、営業利益を高くできるとは限りません。作業手順の不備やそのスピードが遅ければ、逆に製造原価は高くついてしまいます。また、この様な単純作業で全体の人時を取られてしまい、POP(付加価値情報)の作成や試食販売、部下の教育訓練、計画業務などの付加価値業務に投入できる人時が少なくなってしまいます。限られた人時を如何に戦略業務に振り分けられるかが結果を大きく左右します。
単純作業の人時工数削減では、
①品質低下と無駄な作業を招く、無駄な在庫削減
②作業指示書の活用
③カートの効果的活用と作業動作の見直し
④作業導線(レイアウト)の見直し
⑤アウトパックの推進(品質劣化しやすいアイテム以外、信頼できるベンダーに限る)
⑥パート社員の作業訓練による精度とスピードアップ
⑦地場野菜コーナーの強化(最強のアウトソーシング)
などで店内作業工数を削減します。
効率的に仕事をして、1円でも安く売れるように努力する。また逆に、こだわる部分には手間をかけて、美味しく(美味しそうに)、綺麗に、商品化、陳列演出することが重要です。

■営業活動の目的は、部門の営業利益の拡大

営業活動の目的は、営業利益の拡大です。そのためには、売上と荒利だけを目標にするのではなく、人件費を中心とした経費の削減が重要な要素になります。
営業利益を拡大するのに必要なことは、店別・部門別損益管理による『見える化』とその『情報共有』です。
月々の売上高、荒利益高、各種経費(人時管理を同時に行うと効果的)、営業利益を算定し、前年同月対比で改善状況を確認します。

<資料1>
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■好調(お客に支持され、適正利潤も挙げている)店と、不振店は何が違うのか

簡単に言ってしまえば、お客様からの『信頼・信用』を獲得しているか、「信頼関係が築けているかいないか」の差です。
お客様から、地域で一番良い青果売場と感じて頂いていれば、競合店より価格が多少高い物があってもお客様は、継続してあなたの店で買ってくれます。
徹底した、お客様目線(買い易さ、面白さ、楽しさ、便利さ、新しい発見・・・)と、その実現のための行動(戦略、オペレーション、リーダーシップ)の差であると言えます。

特に野菜は、鮮度に対するこだわり、仕入、加工、陳列、見切り処理といった一連の管理を徹底することが重要です。
品質管理では、「まだ、大丈夫」という様な程度の鮮度管理ではいけません。お客様がお買い上げ頂いたあとに、「(この店の)鮮度はやっぱり違う」と感じて頂けなければ、本当の信頼信用をお客様から獲得出来ているとは言えません。
果物は、品質、味にこだわり、試食、糖度測定とその表示、試食販売など、販売側が自信を持ってお勧めできる商品の提供が重要です。
また、カットフルーツや食べきりサイズなど、ニーズを確実に拾う、徹底した顧客目線が求められます。

販売価格は、絶対価格と相対価格の理解が重要です。
売っている商品が何の特徴もなく、競合店と差別化できなければ、単なる価格競争(絶対価格)になります。しかし、鮮度や味、品質などを十分に吟味し、その特徴やお客様のご利益を情報としてPOPなどで提供できれば、お客様は価格が高くても値頃感を感じて(相対価格)買ってくれます。

要するに、こだわり(思い)の差、戦略の違い、生産性の違いということです。

仕入れから販売、お客様の台所まで、一貫して鮮度にこだわることです。
売場で、お客様のレジ清算の時の買い物が多いか少ないかは問題ではありません。一人ひとりのお客様が、当店に年間何回来店してくれて、いくらの売上(荒利益)を落として頂くかが問題なのです。
このような顧客生涯価値と客単価の理解をしていれば、「客単価は低くても問題ない」ということを理解できるはずです。

■荒利益高アップのためのMD事例と管理

一般市場での買い付けでは、マスMD(大量買付・販売)のご利益は期待しにくい。しかし、産地(生産者)との直接買い付けによる、全量もしくは、それに近い買い付け契約という販売側もリスクを取った関係性であけば、互いにメリットはあると考える。規格外品のカット野菜、漬物や調味料などの商品化などと組み合わせれば、大きなメリットを生み出せる。また、地産地消の地場野菜(消化仕入れ販売)なども同様に、生産者も安定した売り上げと利益が確保でき、販売側とのWin-Winの関係構築になる。また、地域との繋がりが強くなり、来店客数増にも繋がる可能性が強い。

また、青果部門では、“100円均一祭”などは、支持率と販売点数アップで高い売上が期待できる。しかし、荒利益率が低下することも考えられるため、その日の実績把握(データ管理)とそれ以外の日との荒利益ミックス(相乗積管理)を戦略的に行うことが重要です。

<資料2>
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その他、実地棚卸を月に1回行う場合は、売買差益を週単位で管理し、売上高と仕入金額と在庫状況から、大方の荒利益の目安を付けておくことと、そのコントロールが確実な荒利益予算確保に繋がります。

<資料3>
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■収益を拡大する一番簡単な方法

競合店の売価に一喜一憂することなく、真のお客様のご利益となる品質と鮮度、そして味で、お客様の信頼を勝ち取ることに日々努力することが重要です。
もし、競合店の価格が脅威であれば、こちらが生産性を確実にアップさせ、経費を低減し、安く販売できる体質になることです。
無駄な経費を削減し、営業利益を拡大し、より良い物をより安く提供できる仕組みと、販売スキルアップのための教育訓練の仕組みを構築することが、今後の競争優位性を高くします。
要するに、お客様が一番喜ぶことに只々努力し続けることです。自然と結果は付いてきます。

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