スーパーの営業戦略入門

2010年06月10日

店と顧客を結ぶコミュニケーション

6月6日の日経流通新聞の「底流を読む」の欄で
“「無償」が高める集客力」”という記事が載っていました。


長野県伊那市にある洋菓子の製造小売り店の話です。

2005年から「夢ケーキ」というイベントで
大量のケーキを無料で贈っているというものです。


イベントを始めたきっかけは、
近隣で高校生が、ナタで父親を殺す事件が発生したことだそうです。


「家族で夢を語りながら仲よくケーキを食べる生活があれば、
こんな事件は起こらない」と考えた同店の専務が、
「夢ケーキ」を贈るイベントを始めたそうです。


小学生以下の子どもたちとその親に、
自分の夢を絵と文章で送ってもらい、
その夢を形にしたケーキを作り店内に展示する。
来店した親子はそれを見、自分向けのケーキを持って帰る。


何と素晴らしいことでしょう・・・。


また、このイベントは、無料。そして、無償であるとのことです。


一つひとつ違うケーキは、製造に大変な手間と時間がかかるそうです。
ちなみに商品にすれば、1個4000円から5000円くらいするそうですから、
コストもばかにならないとのこと。


「それでも自分の夢を形にしたケーキに目を輝かせる子どもたちを見ると、スタッフ一同やって良かったと思う」とおっしゃっています。

私のクライアントにも、
カブト虫の幼虫を来店客に無料で配っているお店があります。


CIMG6296.JPG
 オスとメスの幼虫をパックに入れています。


この店は、高級スーパーということもあり、
来店客のなかに子どもさんの数は多くありません。


幼虫を持ち帰るのは、
ほとんどが大人のお客様だそうです。


孫と仲よくカブト虫を育てるおじいちゃんやおばあちゃん。

自分の幼少のころの思い出を懐かしみながら、
小さな子供と飼育セットを買いに行くお父さん。

いろいろな光景が浮かんできます。


この店は、大型の飼育場を店舗内につくり飼育しています。
大変な時間と手間だと思います。


CIMG6297.JPG
  “カブト虫の育て方”をお付けしている。


お店が、
「お客様に喜んでいただく」ことだけを考えて、
毎年行っている恒例のサービスです。


店舗と顧客のコミュニケーションづくり、

そして、

顧客とその家族の方々とのコミュニケーションを高めていくこと、
小さな思い出づくりのお手伝い。


地域に根ざした、
見返りを求めない
地域の一員としてのご奉仕です。



洋菓子店では、
2004年に1億円だった売り上げが、
2009年には、3億5千万円まで拡大しているそうです。


売上が上がった要因は、
このイベントだけでのことではなく、

顧客に向き合い、

日々、味を良くするための努力、
サービスの質を上げるための努力

を続けた結果でしょう。


そして何より、

このお店の心意気が目には見えなくても、

「誠実さ」や「温かさ」が、
お客様に伝わっているからでしょう。



商品を売ることだけではなく、
地域とのコミュニケーションづくりも大事であると同時に、
その行動の結果が来店客数アップに繋がります。


お店の「信頼」と「信用」もこのあたりから築きあげられるものではないでしょうか。



売り上げが芳しくないことを、
経済状況や地域の競合店などの外部のせいにせず、

顧客に対して、

こちらからコミュニケーションに努め、

主体的に行動を起こすことが大切ではないでしょうか。

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